2025/12/19 12:22


ホンダを象徴する技術のひとつ VTEC(Variable Valve Timing and Lift Electronic Control)

高回転で豹変する「切り替え感」が愛され、ホンダ車の代名詞とも言える存在です。



1. VTECの基本原理


VTECは、回転数に応じてバルブの開閉リフト量とタイミングを切り替える技術です。

低回転域:小リフト/短開弁 → 吸気量を抑えてトルクと燃費を確保

高回転域:大リフト/長開弁 → 吸排気を一気に通して馬力を発揮


これにより、低回転での扱いやすさと高回転での爆発的な伸びを両立しました。



2. 吸気側のみVTEC


初期のVTECは、吸気側だけに機構を搭載したモデルも存在します。


特徴

低回転では吸気を絞り、街乗りトルクと燃費を確保

高回転では吸気効率が跳ね上がり、鋭い吹け上がりを実現


吸気の制御によって“切り替え感”が強く味わえるのが魅力です。



3. 排気側のみVTEC

数は少ないですが、排気側だけにVTECを搭載した例もあります。

特徴

低回転では排気干渉を抑えてトルクを確保

高回転では排気をスムーズに抜き、大馬力を発揮



排気効率の最適化による効果は大きいものの、吸気VTECのような劇的な“切り替え感”は控えめで、環境性能や扱いやすさを狙った設計でした。



4. 吸排気両方に搭載 ― DOHC VTEC

ホンダスポーツの代名詞とも言えるのが、吸気・排気の両方に切替機構を備えたDOHC VTECです。


特徴

吸気・排気が同時に豹変し、回転フィールが一変

6,000rpm付近から「VTECに入った!」と体感できる劇的な変化

サーキットではこの“VTECゾーン”を維持することが速さの鍵

「ホンダらしい高回転NAエンジン」の魅力を象徴する存在です。


5. i-VTECとVTCの登場

2000年代に入ると、従来の切替式に加え、**連続可変バルブタイミング(VTC)**との併用が進みます。

特徴

回転域や負荷に応じてバルブタイミングを連続的に変化

VTECでリフト量を切り替えつつ、VTCでタイミングを最適化

低回転トルク・中回転の扱いやすさ・高回転の伸びを高次元で両立

代表例

K20A(FD2シビックタイプR、EP3後期)

K24A(アコード、オデッセイ等)

この世代では“ドッカン感”は薄れた代わりに、全域でのパフォーマンスが飛躍的に向上しました。


6. VTECターボ ― 進化の最終形

近年登場したのが、**VTEC+ターボ過給を融合させた「VTECターボ」**です。

なぜ必要だったのか?

環境規制や燃費性能の要求

日常域でのトルク確保と、サーキットでの速さ両立

「高回転でだけパワーを出すNA VTEC」では対応しきれない時代背景

特徴

低回転域:小リフトで過給を効率よく利用 → 街乗りから力強い

中回転域:VTCでタイミングを調整し、過渡特性を最適化

高回転域:リフト量を増やし、ターボの過給と合わせて大馬力を発揮


従来の“VTECの切り替え感”は薄れたものの、どの回転数でも力が湧き出る万能型エンジンへと進化しました。


7. まとめ


VTECの進化を振り返ると、

吸気側のみ:高回転の伸びを重視

排気側のみ:環境性能や扱いやすさを狙う

吸排気両方(DOHC VTEC):ホンダスポーツの象徴、高回転型NAの快感

i-VTEC(VTEC+VTC):全域でトルクと燃費を両立

VTECターボ:時代の要請に応え、低回転から高回転まで隙のない万能型へ


かつては「VTECが切り替わる瞬間のキック感」が魅力でしたが、現代では常に速く・常に効率的な方向に進化しています。