2026/03/29 04:38

藤井工藝では、マニュアル車(MT)のシフトノブをオリジナルで製作するサービスを行っています。
「毎日手に触れる部品だからこそ、こだわりを持ちたい」というお客様からのご依頼も少なくなく、
今でも一定の需要をいただいています。しかし今後を考えると、「MT車に乗る若者はさらに減っていくのではないか」という懸念があります。今回は、その背景を整理しつつ少し考察をしてみます。

MT車の現状
現在、新車市場の大半はオートマチック車(AT)が占めています。
それでも、トヨタ86やスープラ、ジムニー、シビックといった「走る楽しさ」を重視したモデルは、今もMTを設定しています。
とはいえ、自動車業界全体の流れはハイブリッドやEVにシフトしつつあり、「原動機そのものが変わる」という事実は無視できません。
一定数はMT車が販売され続けると期待したいところですが、実際に売れ続けるのかは不透明と言えるのではないでしょうか。

教習所のカリキュラム変更
若者のMT離れを加速させる要因として、「自動車学校の教習カリキュラムの変更」があります。
今後、MTの教習は従来よりも短縮され 「4時間で終了」 と言われ始めています。私自身の経験からも、4時間では半クラッチの感覚を習得するのは難しく感じます。3つのペダルを使い分け、タコメータとエンジン音を気にしながら、更に教官との会話にも対応する。このマルチタスクを短時間でこなすのは容易ではありません。
結果として、
・途中で嫌になってMT免許を諦める人
・免許を取っても結局ATしか乗らない人
こうした流れがますます増えていくのではないでしょうか。

Z世代の車への価値観
さらに注目すべきは、Z世代の車への向き合い方です。
かつては「車をいじる=自分らしさを表現する」文化がありましたが、今の若い世代は必ずしもそうではありません。
車をファッション的に楽しむ人はいても、メカニカルな改造やカスタマイズに強いこだわりを持つ人は少数派と考えるべきでしょう。
仮に手を加えるとしても「シフトノブくらい」というケースが多いですが、Z世代の多くは “使えれば良い” という効率重視の考え方を持っている特徴があります。そのため、わざわざシフトノブを交換する層は減少傾向にあると考えられます。

今後のMT車ユーザー
では、今後誰がMT車に乗るのか。
結局は「従来からMTを好んで乗っている人」が中心になると考えられます。
一時期のようにMTユーザーが増えていく未来よりも、むしろ少しずつ減少していく未来の方が現実的です。

シフトノブの加工は簡単ではない
ここで誤解されがちなのが、「シフトノブは簡単に作れる部品だ」という認識です。実際には、毎日手で操作するため 強度・精度・質感 が重要であり、製作には高い技術が求められます。表面のわずかな誤差でも操作性が悪化します。
金属加工では旋盤やフライスによる精密な仕上げが必要。長時間使用しても違和感がないよう、重量やバランスも調整する。
こうした工程を経てようやく「違和感のないシフトノブ」が完成します。単なる飾りではなく、車と人をつなぐ重要なインターフェースである以上、安易な加工では済まないのです。

想い
その中で私達ができるのは、少数派であっても「こだわりたい」と思う方の声に応えられるものづくりです。
毎日触れるシフトノブだからこそ、愛着を持っていただける製品を提供していきたいと考えています。
このようにかなりビジネスセンスのないことをやっています。ここは私が譲れない部分でもありますのでどうか温かい目で見守っていただけますと嬉しいです。