2025/10/31 08:40

鏡面加工と放射熱の関係とは?
シフトノブにも意味があるのか?
自動車部品を仕上げるとき、「鏡面加工(ミラーフィニッシュ)」は見た目の美しさだけでなく、機能面でも注目されることがあります。その中の一つが「熱の放射」との関係です。
今回は、金属部品に鏡面加工を施すことで放射熱にどんな影響があるのか、またシフトノブのような小さな部品でもその効果があるのかを、技術的な視点から掘り下げます。
鏡面加工とは?
鏡面加工とは、金属表面の微細な凹凸を極限まで取り除き、鏡のように光を反射する状態に仕上げる加工法です。研磨・バフ仕上げ・電解研磨などによって行われ、見た目の高級感や汚れの付きにくさから、自動車・バイク・航空機など幅広い分野で使われています。
放射熱と鏡面加工の意外な関係
放射熱とは?
物体は温度を持っていれば、**赤外線などの形で熱を放出(放射)**しています。これは「熱放射」と呼ばれ、熱の伝達方法の一つです。
この放射の量は、以下のような要素に影響されます:
• 表面温度
• 表面の材質
• 表面の仕上げ(粗さ)
• 放射率(Emissivity)
鏡面加工すると、放射率は下がる
ここが重要なポイントです。鏡面加工をすると、放射率(熱を放射する能力)が下がるのです。たとえば、以下は金属の放射率の例です:
材質 表面仕上げ 放射率(Emissivity)
アルミ 荒れた面 0.1〜0.2
アルミ 鏡面仕上げ 0.03〜0.05
ステンレス 鏡面仕上げ 約0.07
ステンレス 酸洗い後 約0.4
つまり、**鏡面になるほど熱を「放射しにくくなる」**わけです。
シフトノブに鏡面加工をすると放射するのか?
結論から言えば:むしろ放射しにくくなる。
シフトノブが金属で、さらに鏡面仕上げをしている場合、表面温度が上がっても赤外線での放熱は非常に少ないのが実情です。
放射が必要なほど熱くなるのか?
車内が炎天下で高温になった場合、金属製のシフトノブはかなり熱を持ちます。ただしその熱のほとんどは空気への伝導・対流と、**手による熱移動(接触伝導)**で逃げていきます。放射による冷却はごくわずかで、鏡面にすることでその効果はさらに低下します。
鏡面加工の本当のメリットは?
• 見た目の高級感と統一感
• 汚れ・腐食への耐性向上(表面積が少ない)シフトノブの場合は「放熱目的」よりも、操作感や質感、デザイン的な価値が中心です。むしろ、放熱性能を求めるなら表面をザラつかせたマット加工の方が有利とも言えるでしょう。
まとめ:放射性能より「触り心地と見た目」が主役
鏡面加工は、熱を放射する性能を高めるわけではありません。むしろ抑えてしまいます。ですが、シフトノブにおいてはその質感・冷たさ・高級感が魅力であり、放熱性はそこまで重要なファクターではないと言えるでしょう。
見た目と機能のバランスをどう取るか?
それが自動車部品設計の面白さでもあります。
